研究内容

感染症は熱帯・亜熱帯地域の人々の健康に対する最大の脅威である。分子感染防御学分野は、この感染症をの制御を目指す基盤的研究を推進している。特に、世界の三大感染症に挙げられる結核を重要な標的として、免疫担当細胞と結核菌の相互作用の解明を通じて、新しい感染制御戦略の開発を目指している。

現在、結核に対する感染防御に重要なサイトカインであるIL-1βの産生を阻害する病原因子Zmp1に着目し、その作用機序の解明と阻害剤の開発に取り組んでいる(図1)。Zmp1はミトコンドリアに局在する電子伝達系複合体IサブユニットGRIM-19に結合し、感染によって誘導されるIL-1bの産生を抑制することを私達は見出した(図2)。近年、自然免疫に誘導される免疫記憶である「訓練免疫」が、新型コロナウイルス感染症を含む多様な感染症の制御に応用できる可能性が示唆されている。結核菌弱毒株であるBCGワクチンはIL-1βに依存した訓練免疫を誘導することが報告されているため、当研究室では、Zmp1抑制による効果的なBCG訓練免疫増強法の創出も目指している。

当分野は、結核菌等の病原体を用いた感染免疫応答の研究に関する全国共同利用・共同研究を推進している。また大学院教育では琉球大学大学院医学研究科生体防御学講座として大学院教育を担当し、免疫学と感染症学を専門とする生命科学研究者を育成している。

  • 図1:結核菌が分泌する病原因子Zmp1による感染防御免疫抑制の模式図。Zmp1が感染マクロファージのERIMに結合し、その結果、NLRP3インフラマソーム活性化によるpro-IL-1bの切断とIL-1b産生、それに引き続く殺菌活性増強を抑制する。
    図1:結核菌が分泌する病原因子Zmp1による感染防御免疫抑制の模式図。Zmp1が感染マクロファージのERIMに結合し、その結果、NLRP3インフラマソーム活性化によるpro-IL-1bの切断とIL-1b産生、それに引き続く殺菌活性増強を抑制する。
  • 図2:結核菌(BCG株)が産生する病原因子Zmp1はミトコンドリア電子伝達系複合体IサブユニットGRIM-19に結合して感染によって誘導されるIL-1βの産生を抑制する。マウスマクロファージ細胞株J774.1にZmp1-FLAGを発現するBCGを感染させて、Zmp1- FL AGと細胞内在性のG R I M - 1 9 を蛍光免疫染色法で検出した。同時にMitoTracker Deep Redを用いてミトコンドリアを可視化した。下段の写真は上段の四角部分の拡大図を示す。
    図2:結核菌(BCG株)が産生する病原因子Zmp1はミトコンドリア電子伝達系複合体IサブユニットGRIM-19に結合して感染によって誘導されるIL-1βの産生を抑制する。マウスマクロファージ細胞株J774.1にZmp1-FLAGを発現するBCGを感染させて、Zmp1- FL AGと細胞内在性のG R I M – 1 9 を蛍光免疫染色法で検出した。同時にMitoTracker Deep Redを用いてミトコンドリアを可視化した。下段の写真は上段の四角部分の拡大図を示す。

メンバー

役職 氏名
教授 松﨑 吾朗
准教授 梅村 正幸
准教授 高江洲 義一
准教授(併任) 金野 俊洋

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