設置目的
琉球大学熱帯生物圏研究センターは、亜熱帯気候帯の立地を生かした琉球大学の生命科学系研究所として、熱帯及び亜熱帯生物圏特有の生命現象について、生物多様性の形成及び維持機構の解明、生物の生存機構解明、共生・感染ダイナミズムの解明、を中心課題に基盤的研究を推進しています。また、食品や健康に関連する応用研究による社会貢献をも目指しています。これは琉球大学の地域特性を活かす研究の四つのキーワードである「島嶼、海洋、亜熱帯、健康長寿」を網羅するものであり、当センターは琉球大学の生命科学系研究の中核となるべく活動を続けています。当センターでは、専門を異にする理学、農学、工学、医学系の研究者が協力しながら上記の研究を分野横断的に進めることにより、新たな研究領域の開拓にも挑戦しています。
当センターは、共同利用・共同研究拠点「熱帯生物圏における先端的環境生命科学共同研究拠点」として文部科学大臣の認可を受け、国内唯一の亜熱帯気候帯に立地する研究拠点として国内外の研究者に研究のフィールドを提供しています。湿潤な亜熱帯気候、複雑な地史のもとに成立した固有種に富む島嶼群、生物多様性が高く陸からのアクセスが容易なサンゴ礁やマングローブ林等、世界的にも珍しいフィールドがそれに該当します。また、当センターの瀬底研究施設及び西表研究施設は、サンゴ礁やマングローブ林などのフィールド研究をサポートする宿泊施設と実験設備を備え、瀬底研究施設では海洋生物の飼育実験のために掛け流しの海水も供給されています。当センターの拠点機能として、この立地と施設を活用したフィールド研究の強化を目指しています。
当センターのフィールド研究強化と並行して、研究の分子レベルの深化も「先端的環境生命科学」の拠点として重要な課題です。千原のメインキャンパスに立地する分子生命科学研究施設と西原研究施設の研究技術が、その点で重要な役割を担っています。現在、ゲノムレベルでの研究が当センターでもルーチンに進行しており、また遺伝子発現解析、微生物叢解析、タンパク機能解析、顕微鏡画像解析、細胞集団解析、などの細胞・分子レベルの解析とフィールド研究を融合させるため、Web 会議やTV会議システムなどを活用した施設間、研究者間の交流と情報交換が進められています。
なお、2021 年は、琉球大学熱帯生物圏研究センターの出発点である理工学部附属臨海実験所(現・瀬底研究施設)と農学部附属熱帯農業科学研究施設(現・西表研究施設)が1971 年に設置されてから50 年にあたります。
この記念すべき年に、これまでの半世紀にわたる活動を振り返り、次の半世紀に向けてより良い研究環境の構築と研究活動の活性化を図っていく所存です。当センターは琉球大学の生命科学系研究所として、地域特性を活かす研究を推進し、同時に共同利用・共同研究拠点として亜熱帯気候帯における研究環境を提供する活動をより充実したものとするべく、改革を進めてまいります。引き続き皆様のご支援とご協力をお願い申し上げます。
沿革
旧・熱帯生物圏研究センターは、日本最南端に位置する琉球大学の立地条件を生かし、熱帯・亜熱帯における生物の多様性や環境との相互作用に関する研究拠点形成を目的とし、学内共同利用教育研究施設であった熱帯海洋科学センター(現・瀬底研究施設、1971年に理工学部附属臨海実験所として設置)、農学部附属であった熱帯農学研究施設(現・西表研究施設、1971年設置)、琉球大学千原キャンパス内に新たに設置された西原研究室(現・西原研究施設)が統合し、1994年に全国共同利用施設として発足した。
1991年に設置された琉球大学遺伝子実験施設を改組し、2001年に遺伝子実験センターが琉球大学千原キャンパス内に設置された.琉球大学のバイオサイエンスの研究の中核的役割をになう施設として機能してきたが、2008年に、研究組織としての存在をより明確にするため、その名称を分子生命科学研究センターに変更した。
2009年 熱帯生物圏研究センターと分子生命科学研究センターを統合し、新たな組織としての熱帯生物圏研究センターが発足、翌2010年に文部科学大臣により共同利用・共同研究拠点に認定された。
管理・運営
- センター長
- 副センター長
- 運営委員会
- 教授会
- サンゴ礁生物科学部門
- 島嶼多様性生物学部門
- 感染生物学部門
- 応用生命情報学部門
- 陸海フィールド生態学分野(センター長直属)
- 客員研究部門
- 技術支援部門
- 総合企画戦略部 研究推進課
施設構成
琉球大学熱帯生物圏研究センターは、沖縄本島の北部に隣接した瀬底島に立地する瀬底研究施設、沖縄本島南部の琉球大学千原キャンパスに立地する分子生命科学研究施設および西原研究施設、沖縄本島南西430kmに位置する西表島に立地する西表研究施設、により構成される。
研究・教育
特色
熱帯生物圏研究センターの特色は、日本では他に類をみない熱帯・亜熱帯起源の多様な生物相に身近に接し継続的な研究が行えることにある。また、その地理的な位置から、わが国における熱帯・亜熱帯の生物学研究を進める上で極めて重要な役割を担っている。センターは内外の多くの研究者の情報交換の場にもなっており、研究者間での議論を通した研究の進展も図られている。教育面では、やはり好適な環境を最大限に生かし、生物を臨場感あふれる場で観察することに重点を置いた実習や研修が開講されている。実際にフィールドに赴いて研究対象を観察することで、課題に対する強い動機を育むことが可能となっている。
熱帯生物圏研究センターは1996-2000年には全国共同利用型研究施設の指定を受け、国内外との共同研究が活性化された。さらに、2008年度に分子生命科学研究センターと統合を果たし、遺伝子・分子レベル、感染生物学の研究も含む総合研究センターとして新たなスタートを切ることになり、文部科学大臣による共同利用・共同研究拠点の認定も受けた。このほか著名な外国人研究者を含む学外の研究者の招聘による国際的な共同研究の推進、非常勤研究員の採用による研究課題の多元化も図られている。
共同利用研究
熱帯・亜熱帯の生物圏に関する研究をセンター外の研究者が、センター教員と共同で、あるいはその支援を受けて行う。受入は毎年、公募により行う。
共同利用研究会
熱帯・亜熱帯の生物圏に関する研究の成果を発表するとともに、将来の研究計画を討論し、共同研究推進のために研究体制を確立する。毎年、公募により行う。
教育
センターの各教員が理工学研究科、農学研究科、医学研究科の指導資格を有し、修士および博士課程の大学院生の教育に積極的に取り組んでいる。また、学部学生に対しては、公開臨海実習、熱帯農業総合学習などの実習を担当するとともに、一般教養講義を開設している。
刊行物
当センターの研究業績を広報するため、年報を発行している。また、ホームページを開設し、年報も含めて当センターの研究活動を開示している。
宿泊施設
瀬底、西表の両研究施設には宿泊施設があり、研究・実習・研修会等に利用できる。利用希望者は、使用規程に従い申し込むことができる。詳細はホームページの各施設の施設概要から利用案内を参照されたい。
令和5年度 熱帯生物圏研究センター併任教員一覧
氏名 | 所属・職名 | 研究課題 | センター受入教員 | 受入部門・分野 | 備考 |
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竹村 明洋 | 理学部海洋自然科学科生物系・教授 | サンゴ礁生物の環境利用特性に関する研究 | 守田 昌哉 | サンゴ礁生物科学部門・サンゴ礁生物機能学分野 | 継続 |
Reimer, James Davis | 理学部海洋自然科学科生物系・教授 | サンゴ礁域における生物多様性研究 | 成瀬 貫 | サンゴ礁生物科学部門・サンゴ礁生物生態分類学分野 | 継続 |
栗原 晴子 | 理学部海洋自然科学科生物系・教授 | 気候変動によるサンゴ礁生態系への影響評価 | 波利井 佐紀 | サンゴ礁生物科学部門・サンゴ礁生物生態分類学分野 | 継続 |
久保田 康裕 | 理学部海洋自然科学科生物系・教授 | 亜熱帯島嶼の生物多様性パターンの解明と保全に関する研究 | 徳田 岳 | 陸海フィールド生態学分野(センター長直属) | 継続 |
木村 亮介 | 大学院医学研究科医学専攻・教授 | メダカ科魚類をモデルとした熱帯生物圏の多様性に関するゲノミクス研究 | 山平 寿智 | 島嶼多様性生物学部門・多様性生物学分野 | 継続 |
金野 俊洋 | 農学部亜熱帯農林環境科学科・准教授 | 熱帯地域の育種に資する基盤研究としての生殖機構の細胞生物学 | 松﨑 吾朗 | 感染生物学部門・分子感染防御学分野 | 継続 |
佐藤 行人 | 医学部附属実験実習機器センター 講師 | 環境DNAを用いたマングローブ生態系の生物多様性解析 | 梶田 忠 | サンゴ礁生物科学部門・マングローブ学分野 | 継続 |
稲福 征志 | 農学部亜熱帯生物資源科学科・准教授 | 亜熱帯生物資源の新奇機能性の発掘と作用機序の解明、ならびにその高度利用に資する研究 | 岩崎 公典 | 応用生命情報学部門・遺伝資源応用学分野 | 継続 |
藤田 和彦 | 理学部物質地球科学科地学系・教授 | サンゴ礁石灰化生物の生理生態及び地球環境変動への応答に関する研究 | 高橋 俊一 | サンゴ礁生物科学部門・サンゴ礁生物生態分類学分野 | 継続 |
中村 崇 | 理学部海洋自然科学科生物系・准教授 | 造礁サンゴおよび周辺生物によるミクロ礁景観の形成 | 高橋 俊一 | サンゴ礁生物科学部門・サンゴ礁生物生態分類学分野 | 継続 |