研究内容
マングローブは、全世界の熱帯・亜熱帯の海岸域に広がるマングローブ林を中心に構成される森林生態系で、様々な生態系サービスを提供している。一方、マングローブは土地改変の著しい海岸部に存在するため、急速に破壊され続けている。本研究部門では、マングローブの生態や保全に関する研究を中心に、以下のような多角的な視点からの研究を実施している。
○マングローブ植物の保全遺伝学的研究:マングローブ林の主要構成樹数種について、遺伝マーカーを用いた保全遺伝学的研究を実施している。ホウガンヒルギやオヒルギなどの広域分布種について、葉緑体マーカーや核マーカーを用いた研究により、種内の遺伝構造の空間分布が明らかになりつつある。
○マングローブ樹種の生理生態学的研究:マングローブ幼植物の湛水ストレス耐性能力、及び、概日時計による生理機能制御と生態的地位との関係に関する研究を行った。また次世代シーケンサーを活用し、世界の主要なマングローブ樹種の網羅的機能遺伝子発現プロファイルデータベースの作成を進めている。
○マングローブ昆虫の種多様性解明:マングローブを生息環境として利用する昆虫相には未解明な部分が多く残されている。この「マングローブ昆虫」の多様性の網羅的な解明を目指した研究を行っている。形態情報だけでなくDNA バーコード領域を援用した分類群単位の認識や種同定を行う計画を立てている。また、例えばマングローブ植物の花蜜・マングローブ林に生息する動物の消化管内容物や糞・ 堆積物などに含まれる生体由来 DNA を用いた、直接観察が難しい種をも網羅した多様性解明を目標にしている。
○マングローブに関する国際共同研究:ミクロネシア連邦・ポンペイ島におけるマングローブ地下部生産・分解プロセスと立地環境研究への協力を行った。マレーシア・サバ州森林局と共同で、マングローブの荒廃の人的要因の解明や自然災害で荒廃地となったマングローブ林の再生促進、海岸侵食の軽減や防災に果たす役割の研究を行った(熱生研MOUに基づく国際研究)。また、インドネシア、マレーシア、ブラジルなどの研究者と国際研究ネットワークを形成し、マングローブ生態系の生物多様性を環境DNA解析を用いて全球的に明らかにするための研究活動を行っている。
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マイクロサテライトマーカーと葉緑体マーカーで示された、マングローブ植物の広域分布種ホウガンヒルギの遺伝構造 (Tomizawa et al. 2017)。実生の生育を左右する光環境を異なる波長域で長期モニタリング
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海外のマングローブ調査では、木に登るだけではなく、泳ぐことも必要となる。現地ワーカーとのコミュニケーションが仕事の出来を左右する。
メンバー
役職 | 氏名 |
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教授 | 梶田 忠 |
准教授 | 渡辺 信 |
助教 | 和智 仲是 |
特命助教 | 磯和 幸延 |
講師(併任) | 佐藤 行人 |