研究内容

分子感染防御学分野は、感染症を熱帯・亜熱帯地域の人々の健康に対する最大の脅威である重要な生命現象ととらえ、その制御を目指す基盤的研究を推進している。特に、世界の三大感染症に挙げられる結核を中心に位置づけ、免疫担当細胞と結核菌の相互作用の解明を通じて、新しい感染制御戦略の開発を目指している。結核菌が産生する多くの病原因子が宿主の免疫応答を抑制することが知られているが、その分子機序には不明な点が多い。結核菌のZmp1 は、結核菌感染したマクロファージからの炎症性サイトカインIL-1βの産生を抑制することにより、炎症反応と抗菌活性の誘導を阻害する。当研究室ではこのZmp1 に着目し、分子生物学的手法を駆使してZmp1 の標的となる宿主側タンパク質ERIM を独自に同定した(図1)。現在、ERIM 遺伝子欠損マクロファージを作製して、感染防御におけるERIM の役割とその作用機序を解析しているところである(図2)。

また、多様な細菌成分が免疫応答を制御する働きを有していることから、当分野では細菌製剤による免疫応答制御が自己免疫疾患を抑制する可能性の検討を始めており、マウスの自己免疫性脳脊髄炎モデルで良好な結果を得ている(図3)。
当分野は、結核菌等の病原体を用いた感染免疫応答の研究に関する全国共同利用・共同研究を推進している。また大学院教育では琉球大学大学院医学研究科生体防御学講座として大学院教育を担当し、免疫学と感染症学を専門とする生命科学研究者を育成している。

  • 図1:結核菌が分泌する病原因子Zmp1による感染防御免疫抑制の模式図。Zmp1が感染マクロファージのERIMに結合し、その結果、NLRP3インフラマソーム活性化によるpro-IL-1bの切断とIL-1b産生、それに引き続く殺菌活性増強を抑制する。
    図1:結核菌が分泌する病原因子Zmp1による感染防御免疫抑制の模式図。Zmp1が感染マクロファージのERIMに結合し、その結果、NLRP3インフラマソーム活性化によるpro-IL-1bの切断とIL-1b産生、それに引き続く殺菌活性増強を抑制する。
  • 図2:Zmp1はJ774.1マクロファージの結核菌(BCG株)感染によって誘導されるIL-1bの産生を抑制する。さらに、このときのIL-1bの産生誘導にはマクロファージのERIM遺伝子が必須の役割を果たす。(*p<0.01;WT,wild-type;KO1/KO2, ERIM-knockout; N.D., Not Detected; N.I., No Infection)
    図2:Zmp1はJ774.1マクロファージの結核菌(BCG株)感染によって誘導されるIL-1bの産生を抑制する。さらに、このときのIL-1bの産生誘導にはマクロファージのERIM遺伝子が必須の役割を果たす。(*p<0.01;WT,wild-type;KO1/KO2, ERIM-knockout; N.D., Not Detected; N.I., No Infection)
  • 図3 細菌製剤の投与で自己免疫性脳脊髄炎が軽減したマウスの病変部に浸潤した白血球分画のt-SNE解析。病態形成への関与が示唆されるpDC細胞(矢印)の有意な低下が示された。
    図3 細菌製剤の投与で自己免疫性脳脊髄炎が軽減したマウスの病変部に浸潤した白血球分画のt-SNE解析。病態形成への関与が示唆されるpDC細胞(矢印)の有意な低下が示された。

メンバー

役職 氏名
教授 松﨑 吾朗
准教授 梅村 正幸
准教授 高江洲 義一
助教(併任) 村上 明一
准教授(併任) 金野 俊洋

キーワード