沿革
沖縄を含む琉球列島は世界的にも珍しい湿潤な亜熱帯気候と複雑な地史、変異に富んだ島嶼環境にあり、豊かで固有性の高い生物相が発達しています。また、琉球列島の沿岸海域は海洋地理学的にサンゴ礁とマングローブによって特徴づけられる熱帯の北限近くに位置し、きわめて高い生物多様性を擁しています。
日本最南端に位置する国立大学法人である琉球大学は、熱帯・亜熱帯の生物圏を対象とした研究を持続的に進める上で、上記のような格好の立地条件を備えています。熱帯生物圏研究センターはこの恵まれた立地条件を生かし、熱帯・亜熱帯の生物多様性や生物と環境の相互利用に関する研究を幅広く推進する拠点です。1994年に全国共同利用施設となり、国内外の研究者に広く利用されるようになりました。
熱帯生物圏研究センター西表研究施設の前身は、1971年に開設された琉球大学農学部附属熱帯農学研究施設です。1994年の熱帯生物圏研究センターの発足の際に、琉球大学キャンパス内の西原研究室、沖縄本島北部に隣接する瀬底島の瀬底実験所とならんでその一施設となりました。
2009年に熱帯生物圏研究センターが分子生命科学研究センターと統合され、それまでの「西表実験所」から「西表研究施設」へと名称が変わりました。 現在の構成施設は、西原本部、分子生命科学研究施設、瀬底研究施設、そして西表研究施設の4つです。
西表島
西表島(いりおもてじま)は、沖縄本島から約430㎞南西の北緯24度15~25分 東経123度40~55分に位置しています。面積は28,444haで、沖縄県内では沖縄本島に次いで大きな島です。西表島の面積の34.3%が西表国立公園(特別地域)、同8%が国設特別鳥獣保護区に指定されています。年平均気温23.4℃、年間降水量2,342㎜(1971-2000年の平均)と、温暖な亜熱帯海洋性気候下にあります。
島のほとんどが日本最大である亜熱帯照葉樹林、マングローブ林で覆われており、島の周囲には美しいサンゴ礁が広がっています。島特有の自然環境の下で独自の進化を遂げた特別天然記念物「イリオモテヤマネコ」を代表とする固有種が生息し、同じく特別天然記念物の「カンムリワシ」や国指定天然記念物「セマルハコガメ」などもみられます。
西表島の人口は2006年現在約2,300人です。産業は農業が主体で、サトウキビ、稲作、パイナップル、マンゴーなどの栽培が盛んです。また、近年はその美しい自然に魅せられ、多くの観光客が島に訪れており、観光業に従事する住民も増加しています。
教育・研究
熱帯生物圏研究センターは、全体で6つの研究領域を持ち、西表研究施設では主として熱帯・亜熱帯地域における植物及び沿岸水域の生物について、以下の3つの領域の研究を行っています。
①森林環境資源学
②生物資源機能学
③植物機能開発学
これ以外にも国内外の研究者との共同研究を行うほか、外部研究者が主体となった研究プロジェクトへの施設設備の提供や、国際協力機構(JICA)の研修員の受け入れも行っています。
また教育面では、琉球大学の学生への集中講義だけではなく、九州・四国地区の農水系学部との単位互換制度による「熱帯農学総合実習」などを行っています。最近では、静岡大学、神戸大学などの実習にも利用されています。
施設
西表研究施設には2つの研究棟と学生40人、研究者10人が宿泊可能な宿泊棟があり、ガラス室や圃場も整備されています。宿泊施設の利用者は、年間3,000人を超えることもあります。